実用性のある物をつくってこそ職人という意識がある。
賀茂人形をつくりながらも、いつもその考えは頭の片隅に居座っている。
もちろん賀茂人形の目的である飾って楽しむという事はとても豊かなことである。
ただ、現在つくられて現在使用されるもの、転用ではなく今使う人に今つくるということが自分の求めるかたちである。
木印章はオーダーメイドの靴と同じで使う人個人のものである。その人の為につくり、実用性という宝を持っている。
だからこそ木印章というものにこだわっている。
自分自身が古式を守りて今生きるものをつくることは、古人の魂が今も生き続けていることの証明である。
木印章にこだわるのは、それが古人と今、そして自分を結び付ける術(すべ)だからである。