第九 返本還源
法(のり)の道あとなきもとの山なれば
松はみどりに花はしらつゆ
染めねども山はみっどりになりにけり
おのがいろ/\花もなきなり
第十 入廛垂手
手は垂れてあしはそらなるおとこ山
枯れたる枝に鳥やすむらん
身を思ふ身をば心ぞくるしむ
あるにまかせてあるぞあるべき
出典 十牛図 書林 其中堂
第七 忘牛存人
よしあしとわたる人こそはかなけれ
ひとつ難波のあしと知らずや
しるべせん山路の奥のほらの牛
かひかふほどに静なりけり
第八 人牛倶忘
雲もなく月も桂も木も枯れて
はらひ果たるうはのそらかな
本よりも心の法(のり)はなきものを
夢うつゝとは何を云いけん
出典 「十牛図」 書林 其中堂
第五 放牛
日かず経て野飼ひの牛も手なるれば
身にそふかげと成るぞ嬉しき
尋ね来しまきのうね牛とりえつゝ
飼ひかうほどにしづかなりけり
第六 騎牛帰家
すみのぼる心の空にうそぶきて
たちかえり行く峯のしらくも
かへりみる遠山みちの雪きえて
こゝろの牛にのりてこそゆけ
出典 十牛図 書林 其中堂
第三 見牛
青柳の糸の中なる春の日に
つねはるかなるかとちをぞ見る
ほえけるをしるべにしつゝあら牛の
がげ見るほどに尋ね来にけり
第四 得牛
放さじと思へばいっとゞ心うし
是ぞまことのきづななりけり
とりえても何かと思うあら牛の
つなひくほどに心つよさよ
出典 十牛図 書林 其中堂
第一 尋牛
尋ね行く深山の牛は見えずして
ただ空蝉の聲のみぞする
尋ね入る牛こそ見えね夏山の
梢に蝉の聲ばかりして
第二 見跡
心ざしふかき深山のかひありて
しをりのあとを見るぞ嬉しき
おぼつかな心つくしに尋ぬれば
行衛もしらぬ牛のあとかな
出典 十牛図 書林 其中堂
左が首を傾けた形で、右が印鈕として安定した形。
共に六分角。
彫った状態で仕上げがまだです。
上の写真中央ので幅3cm。